アスカラール
真生の様子に、
「ああ、ごめんごめん。

何か言ってたかな?」

成孔は慌てて謝った。

「先ほどから本日のスケジュールを申しあげていたのですが、全くと言っていいほどに聞く気がないようで」

「だから、本当にごめん」

成孔はもう1度謝ると、スマートフォンをジャケットの胸ポケットに入れた。

“真っ直ぐに生きる子になりますように”と言う両親の願いを込めてつけられた真生は、その名の通り曲がったことが大嫌いな真っ直ぐな女性だ。

秘書としての腕は一流なのだが、まじめな性格ゆえに怒らせると怖いのだ。

「雑賀ちゃん、機嫌を直してよ。

今度こそはちゃんとまじめに聞くからさ」

成孔は両手をあわせると、真生の前に突き出して謝った。
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