アスカラール
そんな彼に真生はやれやれと言うように息を吐くと、
「仕方ありませんね…」
と、呟いて手帳を広げた。

まじめな性格だからか、自分の仕事を放棄したくないみたいだ。

本日のスケジュールを淡々と読みあげる真生の声を聞きながら、成孔はそんなことを思った。

「以上が本日のスケジュールです。

何か質問はありませんか?」

パタンと手帳をたたむと、真生が聞いてきた。

「いや、特にないよ」

成孔は彼女の質問に答えた。

「では、私の方から質問させてもよろしいでしょうか?」

真生が言った。

「私がスケジュールを申しあげていた時にスマートフォンを見ていた理由は、何だったのですか?

何か大事な連絡でも?」

眼鏡越しから自分を見つめてくる真生に、
「…特に大事って言う訳じゃないかな」

成孔は答えると、彼女から目をそらしたのだった。
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