アスカラール
「高崎さんもなかなかやるよなあ。

森坂さん、完全に自分のことを見ていないのに」

「あの子、高崎さんのアプローチをぬらりくらりと交わしているもんね。

高崎さんが“たまには髪を下ろした姿が見たい”と言えば、“仕事の邪魔になるから下ろすことができません”って言い返したもん。

“僕が選んだ服を買えば、あなたは着てくれますか?”て言ったら、“服はユニクロかジーユーで買うと決めているんです”って見事に一蹴したのよ。

その時の高崎さん、かわいそうったらなかったわよ」

「と言うか…生魚が嫌いですって、わざわざ自分の嫌いな食べ物を言うかね?」

「アレルギーの可能性もあると思うよ」

「どちらにせよ、すご過ぎるわ」

「本人は気づいていないでしょうね。

自分が“天然悪女”と見えないところで称されていることに」

同僚たちはやれやれと、呆れたように息を吐いた。
< 5 / 218 >

この作品をシェア

pagetop