アスカラール
「行ってきまーす」

「はい、行ってらっしゃーい」

父と兄に見送られて自宅を後にすると、最寄りの駅まで歩いた。

電車に乗ってからすぐにカバンからスマートフォンを取り出すと、成孔からメールがきていた。

『おはよう

今日の七夕祭り、楽しみだね』

彼からのメールを読み終えると、美都はメールを作成した。

『おはようございます

仕事が終わったら約束の場所で待っていますね』

「返信、と…」

メールが送信されたことを確認すると、美都はスマートフォンをカバンの中に入れた。

成孔から届いたメールを電車の中――混雑状況によってはオフィスに到着してからのこともあるが――で確認して返信をすることが美都の中で習慣と化していた。

(成孔さん、読んでくれているかな…?)

移り変わる景色を眺めながら、美都は心の中で呟いた。
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