アスカラール
「それじゃあ、お先に失礼します」

「はい、お疲れ様です」

6時になる10分前に仕事を終わらせると、美都はオフィスを後にした。

美都の後ろ姿が見えなくなったことを確認すると、
「高崎さん、大丈夫ですか?」

由真は沙保に話しかけた。

高崎の方に視線を向けると、彼は放心状態だった。

「…あれは、どう見ても大丈夫じゃないわね」

沙保はやれやれと言うように息を吐いた。

「だけど、彼氏じゃないんですよね?

お兄さんの大学時代の後輩だって言ってたんですよね?」

そう言った由真に、
「私も高崎さんにそう言ったんだけどねえ…」

沙保は困ったと言うように言い返したのだった。

「あの様子じゃ、立ち直るまで時間がかかりそうですね」

放心状態の高崎に、由真はどうすることもできないと言った様子だった。
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