アスカラール
差し出された手に訳がわからなくて、美都は首を傾げた。

彼は何がしたいのだろうか?

そう思っていたら、成孔はフッと笑って美都の手を繋いだ。

「えっ、あっ…」

突然のことに戸惑っている美都に気づいているのかいないのか、成孔は手を引くと歩き出した。

「わっ…」

手を引かれた美都は、ただ戸惑うことしかできなかった。

(私、男の人と手を繋いだのは初めてだ…)

美都は心の中で呟いた。

小さい頃に父や兄と手を繋いだ――記憶にはないけれど――ことはあるかも知れない…けど、家族以外の異性と手を繋いだのはこれが初めてだった。

階段で1回に降りると、時間も時間で人がたくさんいた。

何となく自分たちに視線が集まっているのは気のせいだと、美都は思いたかった。
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