アスカラール
七夕祭りに到着すると、そこは多くの人でにぎわっていた。

「久しぶりにこう言うところにきたなあ」

成孔は楽しそうに言った。

美味しそうな屋台のグルメにあちこちから聞こえる楽しそうな声、カップルや家族連れでにぎわっているこの場所に、美都は落ち着かなかった。

(成孔さん、いつまで手を繋いでいるんだろう…?)

しっかりと繋がれている成孔の手に、美都はどうすればいいのかわからなかった。

この手を離して欲しいけど、離したら離したらで寂しくなってしまいそうだ。

(離して欲しいのに離して欲しくないなんて、変なの…)

矛盾している自分の気持ちにも、美都はどうすればいいのかわからなかった。

「美都」

手を繋いでいる当人が名前を呼んだ。
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