アスカラール
美都は指を差すと、
「いちごにします」
と、言った。

「おじさん、いちごを1つ」

「200円ねー」

成孔は屋台のおじさんに200円を払うと、仕切りに入っている容器から慎重にいちご味のかちわり氷を抜き取った。

袋には持ち手のヒモがついていた。

「何か金魚すくいみたい」

美都が呟いたら、
「…あんまり言わないで欲しいな、そう言うの」

成孔は苦笑いをしながら言った。

「先に飲んでみる?」

そう言ってきた成孔に、
「えっ、いいんですか?」

美都は驚いて聞き返した。

「成孔さんが欲しかったから買ったんですよね?」

「美都にかちわり氷がどんなものかを知ってもらいたいから」

成孔は言った。

「じゃあ、お言葉に甘えまして…」

美都は袋から出ているストローに口をつけた。
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