アスカラール
「ただいまー」

家に帰ってきたのは、9時を少し過ぎてからだった。

「お帰り、美都」

元治が迎えてくれた。

「はい、おみやげ。

ベビーカステラ買ってきた」

美都は元治に紙袋を渡した。

「おっ、やった」

元治は嬉しそうに美都から紙袋を受け取った。

「お風呂入ったらもう寝るから」

「そうか。

じゃあ、おやすみー」

「おやすみなさい」

美都は返事をすると、階段をのぼった。

2階の自室に足を踏み入れると、美都は息を吐いた。

「もう、どうしよう…」

成孔のせいで心臓がドキドキと鳴りっぱなしで、自分でも七夕祭りを楽しむことができたのかよくわからない。

(お父さんとお兄ちゃんにとてもじゃないけど言えない…)

美都は両手で隠すように、顔をおおった。
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