アスカラール
スイートルームと言うものはこんな感じなのだろうかと、部屋の中を見回しながら美都は思った。

同時に、自分は成孔のテリトリーの中にいるんだと理解した。

(変なことはしないって言っていたけど…)

心の中で呟いた美都の横を成孔は通り過ぎた。

ガラステーブルのうえに紙袋を置くと、
「どこか適当なところに座ってて、飲み物を持ってくるから」

成孔はそう言うと、キッチンの方へと足を向かわせたのだった。

(す、座っててって…)

美都はどうすればいいのかわからなかった。

ガラステーブルの前にある高そうな革張りのソファーに座る勇気は、自分の中にはなかった。

(もう少し一緒にいたいって言われたけど、食事をするだけじゃダメだったのかな?

と言うか、家に連れてこられた意味がわからないんですけど…)

心の中でブツクサと呟きながら、美都はフローリングのうえに腰を下ろした。
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