Black Cherry ~にゃんこな彼女は一筋縄では捕まらない~
レディースフロアのスーツのコーナーに着くやいなや、色気たっぷりの上司は仕事が早かった。
「んーと、コレとコレとソレとアレ!よし!はい、これ一着ずつ試着して見せてね?」
そう言って、押し込まれた試着室は普通の服屋さんの試着室の倍はあろう広さ、困惑しつつ身につけては見せて着替えてを繰り返した。
着せ替え人形も楽じゃない…。
五着のスーツとインナーシャツはその倍あり、あれこれ着て見せては着替えてを繰り返したら体力以外にも何かが、ゴリゴリ削られていった。
「うん、これ全部もらうから。あと三足ほど、これらに合うパンプスも。この三足かな?ほら、履いてみて」
もはや言い返す体力も気力も無いうちに三足を履く。
すっごく履き心地のよいパンプスに高級感を実感する。
こんな高級な靴は一足で良いし、スーツも二着が限度である。
そう言おうとした矢先、
「うん、問題なさそうだね。この靴も包んで下さい」
「専務!こんなに買えません!!」
慌てて止めれば
「必要経費。それにこの人事ゴリ押ししたって言ったでしょ?だからここは俺からのプレゼント」
そう流し目で言う姿はホントに色気たっぷりのイケメンで、もう格が違いすぎて太刀打ちできる気がしなかった…。
そうして、気付けばサックリと試着したすべての商品はお買い上げされ、自宅配送の手配までされてしまったのだった。