Black Cherry ~にゃんこな彼女は一筋縄では捕まらない~

「あら。奇遇だわ!私も菜々子に聞きたいことあるのよ。今日ランチタイム合わせられるかしらねぇ」

ふふっと笑う沙苗はとても楽しそう。

「たっぷり文句と愚痴を垂れ流してあげるわ」

「あらま!それは楽しみだこと」

コロコロと笑う姿は可愛らしい沙苗。
みんな騙されるなよ?

こんな見た目でキリキリしている彼女は世話焼きなので、実はタイプは歳下男子なんだとか…。

確か現在も四つ下の新入社員的な可愛い系彼氏がいる。

社内では幅広く人気なのにね。

と思いながら、エレベータ前で沙苗と待っていると後ろから大きな挨拶の声がする。

「おはようございます、専務」

「おはよう」

そんなやり取りと微かに交じる黄色い声に、私はスススっと横へと移動していく。

「菜々子?」

「沙苗さんや、私先に行ってるわ!」


そう言うなり私は駆け出し非常階段へと滑り込む。

朝から専務に捕まってたまるか!


そうして五階分ほど階段を駆け上がり、そこのエレベーターホールで待つ。

しかし、それも無駄に終わる。

何故なら付いたエレベータの中には微笑む色気ダダ漏れ上司で専務な啓輔さんが秘書の三笠さんを連れて乗っていたから。

「ふふ。朝から元気だな、菜々子。でも俺からは逃げれないよ?」

エレベータには他の社員もいる。
私は朝イチ、仕事をする前から一気に脱力したのだった。
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