Black Cherry ~にゃんこな彼女は一筋縄では捕まらない~
秘書室に入ると途端に刺さる視線。
どうやら朝のやり取りは既にここに話が回っている模様。
初日からやりづらくしてくれたな。
内心で専務に悪態をつく。
「初めまして、今日から専務第二秘書になります。橋詰菜々子です。よろしくお願いします」
とりあえず内心の怒りやらはおくびにも出さず、にこやかに笑って挨拶をする。
しかし、怒りは背後から冷気のように漂ったようで。
秘書課の綺麗どころの彼女たちも若干腰が引けたようだ。
女の上下関係やら恋愛絡みは非常に面倒くさいので、とにかく荒波に出された私は難破しないように頑張るしかない。
まぁ、沙苗が居るので何とかなるだろう。
「ふふ、皆さん菜々子をよろしくね?」
そう、笑顔で言う沙苗に一番鋭い視線を向けてきた女子社員が怪訝な顔をして聞く。
「沖さん、橋詰さんとはお知り合いですか?」
「同期だし、高校からの友人よ?」
ニコッと言う沙苗。
その目は笑ってなくて、冷気が出ている。
さすが、持つべきものは同類の友人よね。
私はそっと胸をなでおろす。
それを聞くと、その女子社員は少し怯むも私にまたも鋭い一瞥を投げつけてくる。
なかなか、度胸あるじゃない。
私はニコッと微笑み返した。
もちろん目は笑ってないけれど。