Black Cherry ~にゃんこな彼女は一筋縄では捕まらない~

side 啓輔


気になる彼女がやっと秘書に付いてくれる。
いつにないほど心浮き立つ気持ちで出社すれば目の前のエレベーターホールにエレベーター待ちの彼女の後ろ姿が見えた。


出社する俺に挨拶してくる社員たちに挨拶を返しながら、向かったエレベーターホール。

そんなに時間がかかった訳では無いのに、そこには既に彼女の姿が無かった…。

そして彼女と一緒にいた沖さんに突っ込まれた。

「専務、菜々子に何したんですか?専務に気づいて逃げ出しましたよ?」

きつい眼差しで追求される。

俺としては、普通に。
いや、普段よりも丁寧に彼女のことを考え接した週末を過ごした。
少しは距離が縮んだと思っていたのに…。

「専務、憂い漂う色気がダダ漏れです。自重してください」

冷めた目で言う沖さんに

「意識してないものをどう自重する?」


そう返した俺に、深いため息を吐くと

「だから、菜々子に逃げられるんです!もう少し周りを見て色々考えた方が良いですよ?」

助言をもらいつつ一緒に乗り込んだエレベーターで五階上で逃げた彼女が乗ってきた。


「ふふ、元気だな菜々子。でも俺からは逃げられないよ?」

そう伝えると、何故か菜々子に沖さんはガックリと肩を落とし、三笠は呆れたようにため息をついた。

「専務、このままでは橋詰さんは専務に見向きもしませんよ?」

その三笠の予告通り、その後どんどん俺は菜々子に距離を取られるのだった。
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