身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

「ううん、なんでもない。悟兄さん、気を付けて行ってきて」

 私は慌てて顔を上げ、向かいの学兄さんと斜め向かいの悟兄さんに微笑んでみせた。

「おう! 怜那もまぁ、ほどほどに頑張れよ」

 私は笑顔で頷いて、ご飯を口に入れる事で、これ以上の会話を避けた。

 ……ほどほどじゃ、私はいつまでも医学部に進めない。

 大好きな家族だけど、私の苦悩だけはきっと、誰一人分かってはくれないだろう。

 母も父も、兄の向上心には共感できる。
 けれど私の持つ不安はきっと、共感してもらえない。

 不出来な私の心だけは、共有できない。

 家族の食卓にあって、私の心は孤独だった。

 ……私は本当に、この家の一員なのだろうか? 何度そう、思った事だろう。


 そして新たな地に降り立ってさえ、私はまた同じ道を進もうとしている。

 この地でも私はまた、役に立てない……。


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