身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

 ブロードさんは答えない私にゆっくりと言葉を重ね、背中や肩、腕を優しく撫でさする。

「っ、……だけどっ、私がした愚かな行為は消せないっ!」

 私は壊れたように、首を横に振った。

「レーナ?」
「命懸けの処置の最中に、医療従事者が絶対にしちゃいけない行動を、私はしてしまいました! 取り返しがつきませんっ!」

 心に巣食う、真っ黒な後悔を、ぶつけるみたいに吐き出した。

 そうすれば私を抱くブロードさんの腕に、ギュッと力が篭る。顔が、ブロードさんの胸に埋もれる。耳にトクントクンと、ブロードさんの胸の鼓動が聞こえた。

 命を刻む脈動に、新しい涙が浮かぶ。

 だけど涙は滲む傍から全て、ブロードさんのシャツに染み込んでしまう。
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