身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

「レーナ、患者の処置は成功した。若く体力のある患者だ。腕はなくしたが、月日が経てば健康を取り戻す。ならば謝罪の機会は、訪れる。過ちは消せない。しかし、誠心誠意詫びる機会が、レーナには残されている。時が来たら、共に謝罪に足を運ぼう。そうして今は、患者の為に出来る事を考えよう」

 耳元で語られるブロードさんの一言一句が、胸にとぐろを巻く真っ黒な後悔の渦に、柔らかな光となって降り注ぐ。

「……今、出来る事?」

「ああ、実地経験が伴わずとも、レーナが医療分野に造詣が深い事は事実だ。たとえば切断処置後の患者の回復に効果的なものがあれば、差し入れてもいいな。適切な事後処置があれば、それを伝えてもいい」

 ブロードさんが語るのは、私へのただの慰めじゃない。穏やかな声のトーンで、淡々と建設的な内容を語る。

 それは的確に、私の冷静な部分に訴えかける。

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