身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

 私はゆっくりと、首を振る。

「ブロードさん、私は患者さんから受けるであろう言葉、態度、全て受け止めるつもりです。少なくとも、私が患者さんの言動に傷ついて、再び投げ出す事だけは絶対にしません」

「そうか。ならば通うといい。病人でも食が進みそうな果実なんかを厨房から見繕っておこう。それから、処置に使えそうな衛生用品は、リネン室に保管している物があるから持っていくといい。マッサージに使えそうな、オイルもあったはずだ」

 拭ったはずの涙。だけど眦から、新たな雫が頬を伝った。

「……ブロードさん、この恩はいつか返させて下さい」

「なに、恩などとそう大層なものではない。失敗は誰にもある。もちろん、俺もそうだ。今でこそ将軍職にあり、人を従える立場にあるが、ここまでの道のりではどれだけの失敗を積み重ねたか数えきれん。そうしてその度に、多くの人に導かれてここまできたのだ。今は俺の方がレーナより、僅かばかり経験や知識が多い。だから俺に、少し手伝いをさせてくれ」

「ブロードさん……」


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