身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
なんだ?
物音を訝しみ、礼拝堂を振り返る。
っ!!
「……嘘、だろう?」
数多の修羅場を潜り抜け、命のやり取りにすら動じぬ俺が、震えた。人智を越えた奇跡に、息を呑んだ。
星の女神像が、無かった。女神像は真っ白な石膏の残骸となり、台座から礼拝堂の床に散る。
その新雪のような白の上には、艶やかな黒髪が扇のように広がる。
台座には、実体を持つ一人の黒髪の少女が横たわっていた。石膏の白と少女の流れる黒髪の対比が、眩しかった。
まるで魂が鷲掴みにされたかのように魅せられて、少女から目が逸らせない――。