身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
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翌日、俺は朝一番で医務室を訪ねた。
「クレイグス、すまなかったな。昨日はレーナが迷惑を掛けた」
「……ブロード将軍、あんたが謝る事はない。レーナ嬢の知識の深さばかりに目を取られ、実地の経験の無さに気が回らんかった儂が悪い。レーナ嬢にも可哀想な事をしてしもうたわ」
耳に痛い話だった。
クレイグスの言うように、レーナは知識でしか負傷者を知らない。そんなレーナがいきなり瀕死の重傷者を目にすれば、その衝撃はいかばかりだったろう。
「手術に影響は出なかったと聞いているが、患者は?」
「患者の拘束に人手を集めとったから、手術にはなんら問題はなかった。患者の容態も安定していて、今は自宅で女房が看ている」
レーナが半狂乱に叫んだのは、目にした血や肉に対してではないような気がした。