身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
「そうか。……なぁクレイグス、おそらくレーナの世界での外科手術とはこうではないのだろうな」
もちろん、それらに衝撃を受けたのは事実だろう。
けれどレーナはきっと、兵士が抑えつけ、患者の悲痛な叫びを聞きながら強行する処置にこそ、恐れ慄いたのではないだろうか。
「じゃろうな。嬢ちゃんの知る外科手術はきっと、こうではないのじゃろう」
それでも、術前の患者にコカの葉やマンドレイクの根を含ませて痛覚を鈍化させ、患部を氷で冷却して行うクレイグスの外科手術は、格段の成功率を誇る。
「……クレイグス、痛みを麻痺させる薬も研究していただろう? 早く実用化させてくれ」
レーナの目に、この国はさぞ野蛮に映った事だろう。
「まったくじゃ。命を救うための処置の痛みで命を落とすなんぞ、これこそ本末転倒じゃ。儂の息がある内に、なんとしても儂が形にしてやるわ」
「お前は頼もしいな。……クレイグス、すまんがレーナはもう、ここには来させない。レーナには俺から、解任を伝える」