身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
「ブロード様! レーナは大丈夫ですか?」
執務室の扉を開けての開口一番、挨拶もそこそこにアボットが問いかけた。
アボットは口には出さないが、俺を会議に引っ張って行った事を後悔しているようだった。
「塞ぎ込んでいたが、帰宅して少し話をしたら、レーナなりに折り合いがついたようだ。今朝はもう随分と落ち着いていて、患者の元を訪問する支度をしていた」
とはいえ、それはあくまでも表面上の話だ。レーナが心に負った傷は、そうそう癒えるものではないだろう。
「……そうですか」
アボットは痛ましそうに、表情を歪めた。アボットに非などあろう筈もないのだが、アボットは存外に思い詰める質だった。
昨日、クレイグスから伝言を受け取ってからというもの、執務室に漂う空気はどんよりと重い。