身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
「アボット、兄妹というのはなかなか体当たりな関係であるのだな」
俺には兄弟がいないから、初めて知る衝撃の事実だ。
「いえブロード様、たぶん世の兄妹はもう少し穏便に過ごしていると思います」
「……そうか」
どうやら俺は、尋ねる相手を間違えたらしい。
アボットから、手元の予算案に視線を戻す。
数字の羅列を追いながら、おもむろに腹を撫でた。
「俺の腹くらい、いくらだって差し出してやるのに……」
それでレーナがケロっと笑ってくれるなら安い物だ。
「あのブロード様、ブロード様の鋼の腹筋じゃレーナが手を怪我します。だから間違っても腹を差し出すのは止めにしましょう」
っ!
脳内の呟きは声になって漏れ出ていたらしい。しかしアボットにしては的を射た回答に、俺は無言のまま頷いた。