身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
その笑みに、俺の胸がひとつの感情で満たされる。
……愛おしいのだ。
俺はただ唯一、レーナを愛しいと感じている。レーナを俺だけのものにして、慈しみたい。そうしてレーナにも、俺を望んでもらいたい。
それは俺の人生で初めて感じた思い。
齢三十二にして初めて知る恋に、俺は衝撃を受けていた。
それなりの年齢だ、俺とて年相応の女性経験を積んだつもりでいた。
しかし、自ら女性を追い求めた事はなかった。これまで女性は黙っていれば寄って来るもの。愛した事がないのだから、愛した女性を振り向かせようとした事も当然ない。
寄って来る者の中から取捨選択をして、後腐れの無いつかの間の情事に耽る。
女性との関係はそれ以上でも以下でもなかった。
「……俺で良かった。俺がレーナを見つけられて良かった」
けれど今、俺は初めて情欲とは違う確かな愛を見つけていた。レーナを想えば心が温かに熱を持つ。胸が高鳴って、レーナから視線が逸らせない。
愛しくて大切で、欲しいのに悪戯に手を出す事が憚られるこの矛盾。