身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
今日袖を通している木綿のワンピースも、きちんと洗濯がしてあって、汚れは特段見当たらない。
「何かおかしい?」
首を傾げて問えば、ユリーナは苦笑して首を横に振った。
「いいや、おかしい事はないよ。ただ、今までの見るからに上流階級な恰好とはえらい違いだから、ちょっと驚いた」
私の衣食住は全て、ブロードさんによって不足なく整えられている。私はこれまで、当たり前のようにブロードさんが用意した、一目で高級と分かるドレスに袖を通していた。
医務室に助手で行く時でさえ、ドレスを身につける事になんの疑問も待たなかった。
「街を歩くのに、華美な装いはいらないでしょう?」
けれど私は、一昨日から木綿のワンピースを選んで身につけていた。
「いや、まぁ。だけど、なんか違和感が……」
私がこの恰好をするようになって、ユリーナと顔を合わせるのは初めてだ。
ユリーナは一応の納得をみせながらも首を捻っている。
ユリーナにはあえて街を歩くと表現したが、そもそも、患者さんの介助にヒラヒラしたドレスで出向くなど論外だ。
……今更だが、私はやっとその事に気が付いた。