身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
けれど私は今後、患者さんの訪問以外でも木綿のワンピースを身につけるだろう。
「違和感なんて最初だけで、きっとすぐ見慣れちゃうよ」
これまで当たり前に享受していた衣食住。ブロードさんが私に与える暮らし向きは、まるっきり私の身の丈に合ってないのに、これまではそれを疑問にも思わなかった。
見た目ばかり上流階級を取り繕ったって、私には内実がまるで伴ってない。
「そもそも私の内実は貴婦人なんて、程遠いもの。これの方が、ずっと自然な感じがする」
「……そうかなぁ。あたし、このお屋敷でそれなりに上流階級のお客なんかも見てきたけどさ、レーナって凄く不思議なんだよね。レーナの立居振舞いって、幼少期から訓練された貴婦人のそれとは少し違ってる。かと言って、育ちの良さは随所随所から滲み出てて、とても庶民とは思えないんだよね」
ユリーナは何事か呟きながら、うーんうーんと首を傾げていた。
「……まぁ、いっか! どんな恰好でもレーナはレーナだしね! けどさぁ、レーナも大概真面目だよな~。ヒラヒラのドレスが用意されてるなら、なーんも考えないで着てればいいのにさ!」
ユリーナが肩をそびやかし、カラカラと笑う。
……真面目。