身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
「……何か将来の夢が、あるの?」
少年の言葉のひとつひとつが、私の心を深く抉る。
「えっ!? うぅん……まぁ、先生なら笑わないだろうしいっか。内緒だけど俺、建築家になりたいんだ」
唐突な私の問いに、少年は僅かな逡巡の後、照れた笑いと共に告げた。
「そっか。ならその夢を目標に変えて、実現に向かってますます頑張って勉強しよう? 私も出来る限り協力する」
私は少年の肩を叩き、力強く頷いた。
建築家を目指すなら数学と物理は必須だ。数学と物理は医学部受験でも必修科目だったから、私の学んできた知識を教えてあげられる。
少年は目を見開いて私を見上げた。私は少年の輝く瞳に微笑んで、もう一度頷いた。
「! 先生、よろしくお願いします!」
「よしっ、じゃあまずは三問目がやり直し! それ以外は全部正解。終わったら次のプリントもあるからね!」
「は、はいっ!」
私が突き返したプリントを受け取ると、少年は嬉々として再び机に噛り付いた。
そんな私と子供達のやり取りを、ブロードさんが少し離れたところから優しい眼差しで見つめていた。