身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい




 学習指導を終え、教会を後にする私の心は、ふわふわと高揚していた。
 学習の場を設けた事に、子供達や神父様から多くの感謝を伝えられた。だけど私こそが、子供達から多くを教えられていた。

 子供達の学ぶ意欲に触れた。それは確実に、私の琴線に触れた。

 日本では漠然と、両親や兄達と同じ医師を目指していた。

 こちらの世界に来てからは、将来の具体的な展望が描けずにいた。ただ、ブロードさんの庇護下から自立したいと気ばかりが急いていた。
 だけど焦る心とは対照的に、自立のための手段は曖昧に霞んでいた。手段があやふやなまま、自立だけが目標になっていた。

 ところが今、私の胸に確かな展望が膨らみ始めている。まだ、明確な形じゃない。けれど想像すれば、胸が熱くなった。

 勉強を教える事は、純粋に楽しい。問題が解けた時、子供達はキラキラと目を輝かせる。
 子供達の目指す、輝く未来。学習指導を通して私がその実現に関われたなら、それはなんて幸せな事だろう。

「レーナ? ……レーナ」
「っ!?」

 ブロードさんに肩を叩かれて、私はここが教会からの帰り道だった事に思い至った。


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