身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
男性は咳き込む私に目を瞠り、大きく一歩を踏み出して、私との距離をゼロにした。
「女神様、大丈夫ですか?」
……え? メガミサマ?
謎の呼び掛けの意味を測りかね、パチパチと瞬きを繰り返す。
男性は一切躊躇せず、石膏まみれの私をその腕に抱き上げた。果たして人なのだろうかと訝しんだ男性の腕は、温かかった。
背中を支えるガッシリとした腕の感触に、脈が大きく跳ねた。男性の厚い胸に頬が触れれば、あまりの羞恥に身の置き所がない。鼓動は胸を突き破ってしまいそうに、速く大きく鳴っていた。
だけど肌で感じる感触や温度よりなにより、鼻先が触れる距離に見る、男性の熱の篭った紫の双眸が、私の平常心を奪う。男性の水晶みたいな紫に、サラリと流れる金糸の髪が影を落とす。
この世の美を全て寄せ集めたかのような男性の姿に魅了された。
まともな思考の一切を排除して、今この瞬間の全てを男性が支配する。
「あ……」
貴方は誰? 私の問い掛けは、男性の手に遮られた。