身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

 私の反応が予想外だったのか、男性は目を見開いて、そして破願した。

 けれど次の瞬間、男性の笑みは凍てつくような鋭さに変わる。

「間違いなく君の黒髪黒目は美しいと思うがね」

 黒髪と断言された事に動揺が走る。

 男性はそんな私の様子を、読めない笑みを浮かべて見つめていた。

「ここでは腰を据えて話もできない。場所を変えないか?」

 グッと男性が、腰に腕を回す。

「っ!?」

 男性は問いかけておきながら、端から私の返事を待つ気なんてなかった。長身の男性にガッシリと腰を支えられ、私は半ば引き摺られるような恰好で役所を後にした。

 この段になれば、逃げようにも震える足で、大地を踏みしめているのが精一杯。一瞬でも気を抜けば、カクンと膝から頽れてしまいそうな有様だった。


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