身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
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強い不安と恐怖が、胸を締め付ける。喉も、まるで何か物でも詰まっているかのように、呼吸すら苦しかった。こんな状態で、まともな声が発せられるのかどうか分からなかった。
だけど万が一人気のない路地裏なんかに連れ込まれたりしたら、その時は声を張ろう。周囲に助けを求めよう、そう思っていた。
けれど、心配は杞憂に終わった。男性は役所を出て少し進んだカフェの前で立ち止まる。
カフェは見るからに高級感が漂う佇まいだが、怪しい雰囲気は欠片もなかった。
アンティーク調の重厚な門構えのカフェは、一人であれば十中八九入店を断念している。
……そう、恥ずかしながら、主に懐事情によって。
「あのっ!」
あまりの羞恥に顔から火が出そうだった。
けれど伝えない訳にはいかなくて、男性が店の敷居を跨ぐ前に、意を決して待ったを掛けた。
「うん?」
「恥ずかしいんですが私、あまり手持ちがないんです!」