身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

 もちろんブロードさんからは十分過ぎる小遣いを渡されている。けれど必要以上に使うつもりはなく、その大部分は自室の引き出しにしまったままになっていた。

「それがどうした? 君は面白い事を言う。何故男と一緒で、君が支払いの心配をするのだ? それ以前に今回は私から誘っているのだから、代金は私が持つのが普通だろう?」

 男性は怪訝な表情で言った。

 けれど、「普通だろう?」と言われても、私はそもそも男性と飲食店を訪れた経験がない。

「そういうものなんですか……? では、あの、すみませんがここのお代金は甘えさせていただきます」

 男性がこれまでの鋭さから一転して、ふわりした笑みを浮かべた。

 え? 私は柔らかなその微笑みに、思わず目が釘付けになった。

「君は……」

 男性が何事か、小さく呟く。

「あの?」
「いや、とにかく遠慮せずなんでもオーダーしてくれて構わない」

 上手く聞き取れず、聞き返した私に、男性はただそれだけを告げた。その目が僅かに熱を帯びているように感じたのは、きっと気のせいに違いない。

 私は促されるまま、男性に続いた。


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