身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

 店中は高級感漂う落ち着いた雰囲気で、私達の他に客はいなかったが、従業者の姿はそこかしこにあった。

 人目が多くあることに、私はホッと肩の力を抜いた。

 男性はここの常連のようで、慣れた様子で案内を待たずに、店内奥のソファ席へと進む。

 コーナーのL字型のソファの一端に、男性と私は隣り合って座った。アンティーク調のソファは、掛ければふわりと沈み込む。

 けれど私ははじめての場所よりもなによりも、男性との近すぎる距離に落ち着かない思いでいた。

 腰を抱く腕こそ離したものの、私を見つめる男性の双眸は間近だ。

 私の動揺を知ってか知らずか、男性は終始、薄い笑みを浮かべていた。

「私はエスプレッソ、君は? なんにする?」
「え? あ、……オレンジジュースを」

 脇に控える御用聞きの男性に気付き、慌てて答える。御用聞きの男性はスッと腰を折ると、すぐに奥へ消えた。


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