身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

「そういえば、自己紹介がまだだったな」

 男性は気さくな様子で切り出す。

「私の事はザイードと呼んでくれ。君は?」

 笑みを深くして、男性はザイードと名乗った。

 ザイードという名はランドーラ王国では割とよくある名前だ。そうして、現王陛下の名前もまたザイードという。

 これに思い至った時、ぞわりと胸がざわついた。けれど単なる偶然と思い直し、私はあえて疑念を脇へと押しやった。考えすぎれば、雁字搦めに身動き出来なくなってしまう。

「私はレーナと言います」

 努めて冷静に名乗る。

「レーナ、ね」

 ザイードさんは、小さく反復した。


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