身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
私の怜那はレーナと名乗っておけば、なんら違和感なくランドーラ王国風だ。だけどザイードさんが呼ぶ「レーナ」は、どこか異質に感じた。
私自身がこの世界にあって異質である事を、改めて思い知らされたようだった。
「ところでレーナ、君はこの国の建国神話を知っているか?」
ドクンと鼓動が大きく跳ねる。さり気なく振られた話題はまさに、事の核心に迫るもの。私は浅く速くなる呼吸を整えるのに必死だった。
ザイードさんは、そんな私の様子を笑って見ていた。けれどその目が、笑っていない。
「まぁ、ランドーラ国民であれば、子供から年寄りまで知らない者はいないな。しかし、この神話というのはね、空想のおとぎ話じゃない。星の女神というのは実在したんだ」
ザイードさんは答えない私に構わずに続ける。
「だがね、広く語り継がれている神話の結末は正しくない。とはいえ、そんなのは歴代国王を見れば瞭然かな? 王家の血脈に黒という色彩など、欠片も混じってはいないのだからね」
ザイードさんはここで言葉を途切れさせ、ジィッと私を見つめた。