身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

 喉が、カラカラに渇いていた。渇きを認識すれば、目の前のオレンジジュースにゴクリと喉が鳴った。

「……いただきます」

 オレンジジュースに手を伸ばす。
 口元にグラスを寄せれば、瑞々しいオレンジの香りが弾ける。誘われるように、ストローの吸い口からオレンジジュースを口いっぱいに含んだ。

 ゴクリと喉を鳴らし、飲み下す。

 口内に残る爽やかな酸味と僅かなえぐみ。……えぐみ? これはフレッシュジュースに特有のものだろうか? 
 小さく首を傾げながら、一旦グラスを置いた。

 ふと、正面から視線を感じた気がして、見上げた。すると正面のザイードさんが鋭い視線で私を見つめていた。それはまるで捕食者のような、射抜くような強い目だった。

 ……あ?
 ザイードさんの瞳がブレる。ザイードさんの碧い双眸が二重三重に滲んだと思ったら、次の瞬間には、目の前が真っ黒く染まる。

 ……っ、違う! 撓んでいるのは、私の視界!


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