身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
「陛下、我々がお運びいたします」
……え?
「よい、手を出すな。レーナは私が抱いて行く」
「はっ」
……うそ、なんで?
目の前が、絶望に塗りつぶされる。給仕の男性に向かって必死で伸ばしていた手が、力なくパタンと床に落ちた。
「私は王宮に戻る。ここは通常営業に戻せ。それから万事、上手くやっておけよ」
「はっ」
ザイードさんの、いや、ザイード王の手が迫る。
「い、いやぁっ……」
けれど床に重たく沈み込んだ体はもう、抵抗すらままならなかった。
霞みゆく意識の中、ブロードさんの姿が浮かんだ。
ぁあ、ブロードさん……。
そうして意識は完全に、闇に沈んだ。
「……レーナ、君は無防備が過ぎる。いや、無防備なのはそんな君の一人歩きを黙認していたブロード将軍の方か……。まぁ、そんな事はもう、どうでもいい」