身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
「嫌ですよ。だっていつ何時だってお側にいなきゃ、側近じゃないじゃないですか」
アボットは常と同様に、飄々と答えてみせた。けれどこれから俺が向かうのは、生半可な相手ではない。場合によっては闇に葬り去られ、一生日の目を見られない可能性すらある。
「ならば、今日をもって側近の役から解任する」
なによりアボットには、アボットを頼りとする母や弟妹がいる。
「辞めませんよ? っていうか、解任されたってついて行きます」
アボットを思えばこその言葉。だからこそ、アボットには受け入れて欲しかった。
「アボット!!」
けれど俺の思いに反し、アボットは頑なな返答を寄越す。
「だって俺、軍所属に際して、正義を歪めちゃいけないって、宣誓しましたもん。ブロード様が貫こうとしているのは正義ですよね?」
尚も諫めようと口を開きかけた俺は、しかし続くアボットの言葉に、二の句が継げなかった。
「正攻法でない手段でレーナは連れ去られた。それをブロード様が救おうとしてる。誰がどう見たって、正義はブロード様です。レーナの意思に反して事が進められているこの状況は、見過ごせません」
俺は言葉に詰まった。