身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

 その日を生きる為、食うに困れば約束も反故にする。それが、この子らが生きる為には必要だからだ。

「……先に、ちょうだい?」

 少年の要求を受けて、俺は後ろのアボットに目線で指示を出す。アボットはひとつ頷いて、近くの商店に消えた。

 真っ当な商店は軒先に浮浪児が集る事を嫌い、浮浪児には物を売らない。だから物品で与える必要があった。

「今、買いにやらせた」

 少年は走り去るアボットをチラリと横目に見て、小さく頷いた。

「……異国情緒の漂う可愛い女の子が、背の高い男に腕を取られて役所の区画の角のカフェに入ってった。カフェから出て来た時、女の子は同じ男に抱き上げられてて、後ろにぞろぞろ何人か続いて人が出てきた。男はすぐに、店の前に横づけされてた馬車に乗り込んだよ。ちなみにカフェは、男が入る寸前に【open】の札が掛かって、入店後はすぐに【close】にされた。二人が出て行った後はもうずっと【open】のままだった。二人が乗り込んだ馬車はあっちに走っていったよ。俺が一部始終をジーッと眺めてたら、その場に残った一人が寄って来たんだ」

 少年が語った内容はまさに、俺が喉から手が出るほど欲しかったレーナの情報だった。


< 172 / 263 >

この作品をシェア

pagetop