身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
「教えてくれてありがとう。約束通り、これは礼だ。それからもし、君が保護を望むならここを尋ねるといい」
俺は少年に紙袋を渡すと、急いで懐から帳面を取り出して筆を走らせた。
「え? 保護施設とか? ……いやだよ」
紙袋を受け取った少年は首を横に振った。
「ひと昔前は、劣悪な環境の施設が多かった事は否定しない。けれど最近では、地域協力等によって衣食住がきちんと与えられている。君次第だが、屋根のない寒空の下で暮らすより、建設的だと俺は思う。……行く行かないは君に任せる」
少年は答えなかった。
「……」
けれど少年は僅かな逡巡の後、おずおずと手を差し伸ばし、走り書きの帳面を受け取った。そうしてじっと見つめてから、擦り切れたズボンのポケットに押し入れた。
「ではな」
選択肢を与える事は出来るが、最終的に決めるのは少年だ。
俺は少年に別れを告げた。