身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
「怜那、頑張って。大丈夫、あれだけやってきたんだもの! 今度こそ、大丈夫よ!」
笑顔で見送る母に、貼り付けた笑みで頷いてみせるのが精一杯だった。
既に何校かの試験を終えていたけれど、手ごたえはどれも芳しくない。
今日の試験が、最後のチャンスだった。
「……うん、いってきます」
交通機関の乱れを考慮して、私は始発列車で試験に向かった。
鉄道を乗り継ぎ、なんとか開始時刻までに試験会場に滑り込んだ。
ところが、やっとの思いで辿り着いた試験会場は人もまばら。案の定、試験の開始時刻は一時間繰り下げになった。
私の座席は広い大講堂の一番端、外廊下に向かって開け放たれた扉に一番近い所。講堂内は暖房の効きが悪く、扉からは容赦なく外の冷気が吹き込んだ。雪に濡れた体がますます縮こまった。
かじかむ両手を擦り合わせ、握り締める。
窓から見る空はどんよりと厚い雲に覆われていた。雪はもう、止んでいるようだった。
試験開始の十分前、受講者が全員揃ったと、試験官同士の声を潜めた会話が、扉近くに座る私の耳に入る。
大講堂には、異様な緊張感が漂っていた。
カラン、カラーン!
試験開始のベルと同時に、全員が一斉に試験に取り掛かる。