身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
湧き上がる恐怖と、理不尽への怒りに、私は俯いたまま震えていた。
「……ふむ」
頭頂に置かれていたザイード王の手が遠ざかる。
立ち去ってくれるのだろうかと、僅かな期待にほっと息吐く。
「っ!!」
ところが、一向に顔を上げようとしない私に焦れたのか、ザイード王は私の脇に手を差し入れて強引に抱き起こす。
圧倒的な嫌悪が襲う。全身の肌が粟立つ。
「……あっ、やぁ……っっ!」
なのに唇は恐怖に戦慄いて、まともな抵抗すら紡げない。
……ブロードさんっ!
無意識で心の中、ブロードさんに助けを求めて叫んでいた。ホロホロと、眦から溢れた涙が頬へと伝う。
ザイード王は胡坐を掻き、その膝上に、向かい合わせに私を下ろした。
顔を背けようとするのに、顎に手をかけられて、ザイード王の視線から逃げられない。ザイード王の視線が、体温が、全てがあまりに近かった。