身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
けれど今、俺の脳裏を占めるのは国の差し迫った状況よりもっと個人的で、最も重要な事だった。
女官達の話の通り、レーナが妃らが退去した奥殿に置かれているとすれば……っ!
レーナの置かれた状況を想像すれば、湧き上がる怒りに、目の前が真っ赤に染まる。ギリギリと、食いしばる歯の根が軋んだ。
けれどここであらぬ想像に怒りを燃やしたところで、なんの解決にもならない。今すべきは、レーナの救出に最善の策を立てる事だ!
俺はなけなしの理性を寄せ集め、レーナが囚われた王宮をきつく見据えた。
「……レーナが置かれているのが奥殿だとすれば、王宮から出向くにしても近衛が厳しく目を光らせているだろう。ならば王宮東外壁から突破し、直接奥殿の庭に降り立った方が効果的か……」
奥殿には、元々ザイード王の妃らが暮らしていた。妃らが居住とする奥殿は、成人男性の出入りを禁止しており、近衛が常に出入りを監視している。