身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
皆がペンを走らせる音。問題用紙を捲る音。
そんな些細な音が、妙に大きく感じた。いや、それらの音ばかりが頭の中を反響していた。
……私の集中力は、とっくに切れていた。
温まり出した大講堂の中、私の手指はかじかんだまま、動かなかった。
出鼻を挫かれて、座席が寒くて、……そんな言い訳は色々ある。けれど結局は、全て私の実力不足。
座席から重たい腰を上げたのは、ほとんどの受験生が退席した後だった。
丸一日を費やした試験。猛勉強を経て臨んだ三年越しの試験。私にとっては、一生を左右する大事な試験。
けれど、終わってしまえば何とも呆気なかった。
予備校に可否を問うまでもない。不合格はもう、間違いなかった。
家で待つ母に、連絡を入れるべきだと分かっていた。けれど、携帯を手にする気力がなかった。