身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
「……ブロード様!! 俺、見咎められずに奥殿に入る方法を思いつきました! すぐに戻りますから、待っていてください!!」
俺が、取るべき最善を検証しているその横で、アボットが唐突に叫ぶ。
「お、おいアボット!? 待て――」
慌てて手を伸ばしたが、俺が引き止めるより早く、アボットはスルリと身を躱し、一目散に駆けて行ってしまった。
けれど取り残された俺に、焦りはなかった。こういう時のアボットが、常人には思いもつかない機転を利かせる事を、俺はこれまでの経験で知っていた。
それでも今回ばかりは、どうしたって気持ちが急く。アボットの戻りをこんなにも長く、待ち遠しく感じたのは、初めての事だった。