身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
白衣以外にも一般市民が身に付けるよりは上質と分かるシャツとスラックス、実際の診療道具一式が詰まった往診鞄、他にも変装用と思われる小物類が所狭しと広げられていた。
「奥殿に唯一出入りを許される男は医師です!! そうして白衣は名医の代名詞! これでなんとか押し切りましょう! いや、押し切ってやるんです!!」
白衣が名医の代名詞というのは少々オーバーではあるが、クレイグスにより急速に普及が進んでいるのは事実だった。
白衣は軍医のクレイグスが衛生環境を守るために、着衣の汚れが分かり易いようにと身に付けたのが始まり。その後、クレイグスの手腕を評価する王都近郊の志高い医師らの間で白衣は一気に広まりをみせている。
「……なるほど。それで、アボットが開けているその包みはなんだ?」
けれど今、俺の目が釘付けになっているのは白衣ではない。