身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

 そうしてアボットに指示されるまま、俺は白髪の鬘を被り、白髭を模した物を鼻の下と顎下に粘着剤で貼り付けられた。

「いいですねブロード様! どっからどう見ても老医師にしか見えません!!」
「どれ、……!!」

 アボットが断言する通り、アボットから差し出された小さな姿見に覗く俺の姿は、老医師にしか見えなかった。

 体格と髭のマッチングだろうか、妙な風格までもを醸し出していた。

 体裁だけは、これで十分に整った。これならば、遣りよう次第で十分に奥殿にも侵入は可能ではないかと、そう思えた。

「……アボット、行くぞ!」
「はいっ!」

 こうして医師と助手に扮した俺とアボットは正面切って王宮に乗り込んだ。






< 196 / 263 >

この作品をシェア

pagetop