身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
「ご苦労」
いまだ成人を迎えぬ若き王太子殿下は、悠々と進み出て扉を潜る。俺とアボットも、その後に続く。
三人が奥殿に渡れば、近衛兵の手で重厚な扉は再び閉じられた。
「その恰好、なかなか似合っていますよブロード将軍?」
口火を切ったのは、前を行く王太子殿下だった。
「……何故、お分かりに?」
客観的に見て俺もアボットもかなり精度の高い変装が出来上がっており、そうそう見破られる事はないだろうと踏んでいた。
「あぁ、当たった? やっぱりね。だってこの状況で星の女神を助けに来るのなんて、扶養者の貴方以外にいないだろう?」
なるほど。御年十四歳、成人を翌年に控えた若き王太子殿下は見事な状況判断をしてみせた。しかも俺はそんな王太子殿下のカマかけに辛くも嵌まってしまったらしい。