身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

「星の女神は奥殿の一番奥の居室を宛がわれているよ。ちなみに父上は朝から城を空けていて、戻るのはどんなに早くても日が沈んでからになるんじゃないかな」

 その上で王太子殿下は、俺が喉から手が出るほど欲しいレーナの情報を、いとも簡単に伝えて寄越す。
 ……この状況は、吉か凶か。

「何故、我らの肩を持つのですか? ……王太子殿下?」

 王太子殿下は一度宙を仰ぎ、薄い笑みを浮かべて俺を振り返った。

 奥殿は男子禁制。けれど成人を迎えぬ男児に関しては、母の居室への訪問が許されており、奥殿への出入りに制限はない。翌年に成人を控える王太子殿下もこれに該当するのだが、俺を見上げた王太子殿下の目は既に子供のそれではなかった。

 年齢以上の達観をみせる王太子は今、何を思うのだろう。

「どうしてだろうね? 強いて言うなら、決心がついたから、かな」

 決心?


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