身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

 王太子殿下は目線を正面に戻し、これ以上語ろうとはしなかった。

 無言のまま、俺達は回廊を奥へと進んだ。

「ところでブロード将軍、貴方は建国神話の真相を知っている?」

 すると突然、王太子殿下がこんな質問を投げかけた。

「星の女神は王の求婚を断ったと、聞いたことがあります」

 俺はこの問いかけに、レーナを見つけた晩のドリアス牧師との会話を思い出していた。

「うん、正解。じゃあさ、王の求婚を断ったその後は?」

 そうして、まさにドリアス牧師がこの続きを語ろうとしたタイミングで、会話は途切れ有耶無耶のままである事に思い至った。

「いえ……」

 ゆるく首を振る俺を王太子殿下は一切の笑みを排除した真剣な目で見据え、ゆっくりと口を開いた。


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